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「少年といぬ」を読んで

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新築・リノベーション・リフォームのアクアプラスの上野です。

 私は犬が大好きです。幼い頃から暮らしの中に犬がいました。犬の愛おしさ、忠誠心はいつも心の中に生きています、と同時に犬の寿命が短いことに悲しい思い出もあります。立ち寄った本屋で『少年と犬』のタイトルを見つけた時は迷わずこの本を手にしていました。第163回直木賞受賞を知ったのは読み始めてからのことです。

 この作品は、2011年東日本大震災で飼い主を失った犬(多聞)が、宮城の釜石から熊本までを旅し、犯罪をおかす男、自殺願望の少女、死期を迎えた老人、娼婦など6人の人生の苦しみや淋しさを抱えた人に出会いながら、少年(光)と再会するまでが描かれている感動の小説です。涙が何度も読書を止めました。

 多聞はいつも空腹で肋骨が浮き出、やせ細り、毛は汚れ、薄汚い容姿で現れ、助けられます。しかし、助けられるのは出会いの時だけで、すぐに助けてくれた人間に寄り添い、癒しになっていきます。助けたほうの人間が、これまでと違う自分に気づき、絶望の中に勇気と希望、そして幸せを見つけます。

 多聞とは仏教で説く「多聞天」で「よく聴く者」「人を護る」からのネーミングです。

 小説では人が多聞を見ていますが、実は多聞が人を見ています。その目は人の心をそのまま映す鏡のようであり、多聞と向き合うことは自分の心と向き合い、語りかけることは自分の心に語りかけることでした。

 多聞は優しい言葉をかけてくれることも、共に涙を流してくれることもありません。どこまでも忠誠で、ただただ寄り添い、彼ら彼女らの言葉にできない孤独や哀しみに耳を傾けます。

 当たり前ではない、寄り添ってくれるものの有難さに改めて感謝し、生きることへの優しさと愛を認識させてくれる本でした。

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